才能煌めくピアニストが華々しく示す「私のジャズの流儀」『Appreciation』田中菜緒子

才能煌めくピアニストが華々しく示す「私のジャズの流儀」『Appreciation』田中菜緒子

リーダーとしての活躍は言わずもがな、日本ジャズシーンが誇る名手達、近藤和彦(アルトサックス)や岡崎好朗(トランペット)など数多くのバンドでも才気を発揮するピアニストの田中菜緒子。中島朱葉の初リーダー作『Looking For Jupiter』での好演や、村田千紘(トランペット)とのデュオ「村田中」でリリースした『SCHOOL OF JAZZ』も記憶に新しい。

ジャズシーンのみならずポップスの世界でも活躍して多忙を極める中、自身のオリジナル曲中心のアルバム『Appreciation』を2022年3月にリリースした。長年共演を重ねて信頼の厚い、安田幸司(ベース)、安藤正則(ドラムス)とのトリオを主軸にして、長年日本ジャズ界を牽引してきた山口真文(テナーサックス)が1曲、先述の岡崎好朗、若手注目株の佐藤敬幸(アルトサックス)も数曲参加している。

歯切れが良く、明朗快活な田中のピアノの魅力が全編に渡って収録されており、演奏、楽曲だけでなく、サウンド作りにも注力した成果が如実に表れている。安田、安藤もそれぞれの魅力を随所に垣間見せながら、堅実なリズムを刻む。田中が色彩豊かに描く音世界を岡崎、佐藤の2管が歌い上げる冒頭の“Hydrangea Flower”、セロニアス・モンクへの敬意溢れる〈Monk’s Birthday〉、疾走感溢れるトリオの力強い演奏が素晴らしい“M.T.”、そして表題曲の“Appreciation”では山口の暖かく包容力のあるテナーサウンドが聴き手に優しく語りかける。

■アルバムより“Hydrangea Flower”

写真左から…佐藤敬幸、山口真文、岡崎好朗、田中菜緒子、安藤正則、安田幸司

田中の洗練されたピアノと安田の雄弁なベースの呼応が耳を引く“Aries”、佐藤のリラックスしたブロウが心地良い“mine mine”と魅力的な楽曲が並ぶ。“A New Day”ではピアノトリオのスウィング感をじっくり味わえる。そして未だ続くコロナ禍の中にあっても、ジャズの道へ力強く歩んでいく彼女の意志を曲に乗せた勇壮な“strangth”を経て、ピアノソロによる“konomichi”で穏やかに、なおかつ情緒深く締め括られる。

この1枚は田中菜緒子のジャズに対する深い愛情と尊敬の念が見事に具現化されていると思う。彼女の現時点での集大成であるだけでなく、これからさらにジャズの深淵に突き進んでいく決意表明だ。

Photo:Shima Takuya

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