理想のサウンドに真正面から取り組んだ、ジャズ愛溢れる逸品 『’Tis Love』村田千紘

理想のサウンドに真正面から取り組んだ、ジャズ愛溢れる逸品 『’Tis Love』村田千紘

2015年に1stアルバム『Passion』をリリース、2019年にはピアニストの田中菜緒子とのデュオユニット「村田中」のアルバム『School of Jazz』でメジャーデビュー。近年はMISIAのツアーにも参加するなど、ジャンルを飛び越えた活躍がますます光るトランペッターの村田千紘

多彩な音楽性の中で常に自己の理想とするジャズへの研鑽を重ねてきた村田が、2枚目のリーダー作『’Tis Love』を堂々完成させた。久々のリーダー作は以前から思い描いていた自身のトランペットによるワンホーンでのカルテット作品となった。

ピアノに石田衛、ベースに若井俊也、ドラムスに菅原高志という、経験、実力申し分ないレコーディングメンバーが脇を固める。このバンドで約2年前から共演を重ね、村田にとって自然体で演奏に臨めるレギュラーカルテットとなった。

村田のトランペットを軸にして、リラックスした中に、バンドの結束力の高さを感じ取れるメリハリの効いたサウンドが耳に滑らかに入ってくる。

スタン・ゲッツやレッド・ガーランドの名演でジャズファンには馴染み深い名曲、“’Tis Autumn”からアルバムは穏やかながら、心の底から感情を込めた村田の優しく歌うトランペットで幕を開ける。主役にそっと寄り添う石田のピアノも高貴に響く。

1曲目からガラリと表情を変える威勢の良いナンバー、“Under Forest”はバンドの親密度の高さがひしひしと伝わってくる。

To Love Again”のようなメロディをじっくり歌い上げるナンバーでは村田の情感豊かなトランペットの音色に耳を奪われる。バンドサウンドが勇躍する“Quiet Now”はビル・エヴァンスの名演が印象深いが、このカルテットでも素晴らしい演奏を披露している。トランペッターがあまり取り上げない曲をあえて選ぶという村田の楽曲への探究心が伺えるナンバーだ。

また柔和な表現力を聴かせる“Dindi”や、小粋さも兼ね備えた“How About You”、親しみやすいメロディーを持つ村田のオリジナル、“Snow Flake”や“Ichibo”にも注目してほしい。また全編にわたって、若井と菅原の柔軟なリズムワークと、村田の演奏にさらに華を添える石田の好演も大いに味わえるのも嬉しい限りだ。

そしてラストの“Fly Me To The Moon”は石田とのデュオで締め括られる。静かに歌い上げる2人の音色にじわりと心が満たされていく。

伝統的なサウンドと自己の個性を反映させ、思い描くジャズの形を結実させた『‘Tis Love』の発表によって、彼女のトランペッターとしての活躍がさらに広がり、日本のジャズシーンの活性化に繋がることだろう。

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