ジャズに対する渾身の想いに心打たれる『Looking For Jupiter』Akiha Nakashima Quartet

ジャズに対する渾身の想いに心打たれる『Looking For Jupiter』Akiha Nakashima Quartet

待望、という言葉がふさわしいアルバムがリリースされた。それはアルトサックス奏者、中島朱葉のリーダーバンドによる初のアルバム『Looking For Jupiter』だ。

これまで中島は自身の活動はもちろん、石若駿率いる「Answer to Remember」や西村匠平(ドラムス)、魚返明未(ピアノ)、高橋陸(ベース)との「.Push」などへ参加し、力強い演奏で我々を魅了してきたが、多くのファンは中島自身のリーダーアルバムも長年待ち望んでいた。その分、今回のアルバムリリースの第一報があった時から楽しみにしていた方はきっと多い事だろう。

中島朱葉

中島のリーダーバンドとして、定期的に共演を重ねて信頼する、田中菜緒子(ピアノ、フェンダーローズ)、伊藤勇司(ベース)、濱田省吾(ドラムス)と共に制作した『Looking For Jupiter』はこのバンドの魅力が目一杯詰め込まれた渾身の力作に仕上がっている。

左より、濱田省吾、中島朱葉、田中菜緒子、伊藤勇司

アルバムの幕開けを華々しく飾る“Breakout”から、さっそくパワフルで分厚いサウンドが耳に飛び込んでくる。このバンドの溢れんばかりのエネルギーを象徴するかのようだ。

田中作の“NYの思い出”は1曲目から一転して穏やかに、各メンバーが味わい深く曲の情景を紡いでいく。中島の温かいサックスの音色が心地良い。

「.Push」のアルバム『ハイボールパーティー』にも収録されていたボッサテイストの効いた“Pisca-Pisca”では、田中のフェンダーローズによって曲の新たな魅力が浮かび上がる。伊藤のベースワークにも注目して聴いてほしい。叙情的な“雪のワルツ”に続いて、アルバムタイトル曲である“Looking For Jupiter”へ。中島の迫力ある演奏をバンドがさらに鼓舞していく様相に圧倒される。

アルバムの折り返し地点、6曲目は田中とのデュオで“The Nearness of You”。中島の歌心溢れるアルトと、それに寄り添う田中のピアノが素晴らしいテイクとなっている。

Tell It Like It Is”は中島が敬愛するウェイン・ショーターの作曲、アート・ブレイキー&ジャズメッセンジャーズ在籍時にアルバム『The Freedom Rider』に収められた名曲。中島の逞しいブロウとアート・ブレイキーへのリスペクトが垣間見える濱田のドラミングが炸裂する。

After The Rain”は中島が作曲を始めた頃の思い出深い曲。音楽、ジャズへの強い信念を示してアルバムは締めくくられる。

演奏はもちろん、選曲、構成、サウンド、アートワークと細部に至るまでこだわり抜いた本作は、今後のジャズシーンにおいての重要な作品の1つとして、ジャズファンに強く記憶されるのではないだろうか。

そしてこれからの中島の活躍もさらに楽しみになる1枚だ。

Photo:関真奈美

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