【2020年】ジャズ・アルバム BEST5

【2020年】ジャズ・アルバム BEST5

この記事を見た人の多くが、「2020年って、タイトルの数字間違ってるぞ。おそらく、2021年の上半期ベスト5じゃないのか」と思ったかもしれないが、悲しいことに(より正しくは、情けないことに)この数字は間違いではない。この記事は、嘘偽りなく2020年のジャズ・ベストアルバムについて紹介していく記事だ。編集長の怠惰により、もう2021年も6月を迎えてしまい、梅雨の予感がまとわりつくような空気が流れている。繰り返すが、このタイミングで2020年のジャズ・ベストアルバムを紹介する理由は、完全なる編集長の怠惰である。類稀なる100%の怠惰の結果、世界でもっとも遅く、2020年のジャズ・ベストアルバムについてこれから話すのだ。

今回は、ジャズフリーペーパー「VOYAGE」の編集長、小島良太氏にもベスト5を選んでいただいた(もちろん彼は、この記事を2021年1月に送ってくれている。もうすぐ夏が来るなんて嘘みたいである)。

それでは早速(半年ほどの時が流れたというのに、なにが早速なのだろう?)、それぞれのベスト5を紹介していこう。

猫山文子が選ぶ2020年ジャズBEST5

①サンダーキャット『It Is What It Is』

It Is What It Is

リリースから1年以上経った今でも、このアルバムをはじめて聴いたときの胸の高鳴りは忘れることができない。ファンキーなメロディーに心地良く揺れたかと思えば、ふと訪れる祭りのあとのような寂しさ。誰かの独り言を聴くような表題曲に耳を傾ければ、夜はいつの間にか明けていた。そんな一枚だ。

オススメの一曲▶︎「It Is What It Is」

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②Various Artists 『Blue Note Re:imagined』

デッカ・レコードとブルーノートがタッグを組んだ一枚。エズラ・コレクティヴやアルファ・ミスト、ヌバイア・ガルシア、シャバカ・ハッチングス……新たUKジャズ・シーンを築いてきた錚々たるアーティストたちが、ブルーノートの歴史を彩ってきた名曲たちをカバーしている。UKジャズ・コンピといえば、確固たる意思表明かのような一枚『We Out Here』(2018)の衝撃も未だ忘れられずにいるが、本作はさらに予想外の出来事の連続だ。名曲が新たに再構築されていく様子を、ぜひ目の当たりにしてほしい。

オススメの一曲▶︎Footprints

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③アンブローズ・アキンムシーレ 『on the tender spot of every calloused moment』

ボディ・ブローがじわじわ効いてくるような一枚。アンブローズ・アキンムシーレは現代ジャズ・シーンを代表するトランペッターと言っても過言ではなく、セロニアス・モンク国際ジャズコンペティションや、カーマイン・カルーソー国際ジャズトランペットのソロ・コンペティションでも優勝してきた逸材だ。「黒人の生活の複雑さ」といった本作のコアは、デビュー作『When The Heart Emerges Glistening』から引き継がれているものと言っていいだろう。

オススメの一曲▶︎Roy

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④パット・メセニー 『From This Place』

『Kin (←→)』(2014)以来6年ぶりのアルバムとなった本作。多くの人がパット・メセニー・グループを思い出したであろう一枚だ。一言でまとめてしまえば、まさに原点回帰。「私が聴きたかったパット・メセニーがここにある」と思った人も少なくないだろう。サウンドで緻密に組み立てられていく物語に息を飲んでしまう。「聴く」というよりも、「読む」、「観る」と言いたくなるような一枚だ。

オススメの一曲▶︎Love May Take Awhile

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⑤カッサ・オーバーオール『I Think I’m Good』

ジャイルズ・ピーターソンお墨付きのマルチすぎるアーティスト、カッサ・オーバーオール。ドラマーでありラッパーでありヴォーカリストであり、そしてプロデューサーでもある彼が2020年にリリースした本作は、BIG YUKI、ジョエル・ロス、ヴィジェイ・アイヤーなど豪華なゲスト・メンバーが勢揃い。彼お得意のコラージュ・ワーク的サウンドは、何度聴いても飽きないのがお見事だ。いろんな具材を煮込んでみたら、何度食べても飽きないカレーができた。そんな一枚。

オススメの一曲▶︎Sleeping on the Train

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小島良太が選ぶ2020年ジャズBEST5

①ヌバイア・ガルシア『Source』

2017年発表の『Nubya’s 5ve』ですでに非凡な才能を披露していたが、本作でそれが一気に花開いたように思う。昨今のUKジャズシーンの隆盛を代表する1枚。この作品を聴かずして2020年のジャズシーンは語れないだろう。多種多様な音の色彩が彼女を通して、さらに鮮やかになっていく。様々なシーンを繋ぎながら、それを自然に表現し、我々に新しい音楽の景色を見せてくれる。本作以外では『Blue Note Re:imagined』で披露したジョー・ヘンダーソン作“A Shade Of Jade”の演奏も素晴らしく、そちらもぜひ聴いていただきたい。

オススメの一曲▶la Cumbia Me Está Llamanbo[Feat.La Perla]

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②ブラッド・メルドー『Suite:April 2020』

過去に例を見ない混沌を経験した2020年のコロナ禍。その経験をブラッド・メルドーがソロピアノで描写する。もどかしい人と人との距離、自由に行き来できない世界。慌ただしい日常が今や恋しいくらいだ。さまざまな苦しみを体感したからこそ、彼の演奏から日々の喜びや未来への希望を持つ事の尊さを感じ、心身に沁み入った。特に終盤3曲の演奏には彼の歌心が横溢しており、深く心打たれた。

オススメの一曲▶New York State of Mind

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③イマニュエル・ウィルキンス『Omega』

ジョエル・ロスのアルバムでも素晴らしい演奏を披露したイマニュエル・ウィルキンス。彼の初リーダー作はすでに気高い風格を纏う。サックスは繊細な表現力でソロ、アンサンブルに独自の色合いを表出。ソングライティングの才も目を見張るものがある。これからどんなサウンドを生み出すのか、良い意味で想像がつかない。本作のリリースによって、常に時代の潮流を鋭敏に捉えるブルーノートレーベルの慧眼が改めて浮き彫りになったと思う。

オススメの一曲▶Grace And Mercy

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④アイザイア・J.トンプソン『PLAYS THE MUSIC OF BUDDY MONTGOMERY』

2018年のモンク・コンペティション準優勝、2020年11月にルディ・ヴァンゲルダースタジオで行われたハンク・モブレートリビュートの配信ライブでジョー・ロヴァーノらと共演するなど活躍著しい若手期待のピアニスト。なんと初リーダー作で取り上げたのはヴィブラフォン&ピアノ奏者のバディ・モンゴメリーの楽曲たち。全編ブルージーなテイストと心地良いスウィング感に満ちた堂々たる演奏を繰り広げている。

オススメの一曲▶Muchisimo

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⑤片倉真由子『plays Coltrane』

ジャズへ真摯に向き合う姿勢にいつも敬服する片倉真由子の渾身の演奏が余すところなく詰め込まれている。粟谷巧(b)、田中徳崇(ds)という理想的なリズムセクションと共に、壮大で深遠なコルトレーンの名曲群に現代の息吹を吹き込み躍動する。これまでのコルトレーンの楽曲を扱った作品の中でも出色の1枚ではないだろうか。そしてこのトリオはこれからさらに発展していくだろう。

オススメの一曲▶Resolution

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