詰め込まない、余白の美。『THE GUITAR MAN』土岐英史 feat.竹田一彦

詰め込まない、余白の美。『THE GUITAR MAN』土岐英史 feat.竹田一彦

日本の音楽シーンで確固たるポジションを築いているサックスプレーヤー、土岐英史

ここ数年は国内のジャズミュージシャンにスポットを当てるレーベル「Days of Delight」から、ほぼ年に1枚のペースで意欲的にリリースを続けているが、そのどれもが土岐のこれまで培ったキャリアだからこそ表現できる貫禄の演奏と、新鮮なアイデアが詰まった好作品ばかりだ。

そして土岐は、またもや魅力的な作品『THE GUITAR MAN』を世に送り出した。大阪のレジェンドギタリスト、竹田一彦をフィーチャーしてのアルバムリリースとは第一印象は意外な組み合わせと感じたが、かねてからギターのサウンドを愛好する土岐からしてみれば、それは必然であったのだ。

日本のジャズギターを語る上で、竹田一彦の事を紹介する事を避けては通れない。竹田の主要な活動エリアの関西だけでなく、全国で彼のジャズギターに心酔し、支持するギタリストやジャズファンは多い。

ハンク・ジョーンズやミッキー・ローカーなど、海外のレジェンド達とも共演するなど、彼の生き様が戦後日本のジャズ史を歩んでいると言っても過言ではないのではないだろうか。

2000年代以降は自身のリーダーアルバムも折に触れてリリースされ、ジャズギターファンから高評価を得ている。彼の演奏を実際間近に聴けば、誰もが心の奥深い所を揺さぶられる事だろう。

今回、土岐は自身のレギュラークインテットに参加している信頼厚いドラマーの奥平真吾、土岐とは豊富な共演歴を誇る宮川純をオルガンに迎えて、スモーキーな味わい香る作品を作り上げた。

アルバム録音前日に同メンバーで京都「RAG」でライブを行い、お互いの空気感、サウンドの妙を掴み取った上で翌日にレコーディングしたことが功を奏したのか、まるで長年共演を続けているかのようなユニットしてのまとまりを感じる。

竹田はシンプルながら、情感の込もった唯一無二のトーンで好フレーズを随所に繰り出す。土岐も余裕を持たせた、雄大なブロウで応える。そのやり取りは、まるで土岐と竹田が演奏によって、じっくりと語らい合っているようだ。

その語らいは、それぞれが主張し過ぎず、互いの音を良く聴いて、噛みしめているようにも映る。言いたいことばかりを矢継ぎ早に詰め込んで、互いの良さを消し合うような余裕の無さはこのアルバムには無縁である。

音を詰め込まないからこそ生まれる、「余白」の部分に彼らの演奏の美点を見つける事ができるのではないだろうか。

Apple Musicはこちら

Spotifyはこちら

ディスクレビューカテゴリの最新記事