受け継がれるブルースロック ケニー・ウェイン・シェパード“LIVE ON”

受け継がれるブルースロック ケニー・ウェイン・シェパード“LIVE ON”

今年の夏は、フリートウッドマックの”Oh Well”について目と耳にする機会が多かったように思う。

どうやら、2020年7月25日にフリートウッドマックの創設メンバーであり、ギタリストでもあるピーター・グリーンが亡くなったそうなのだ。

追悼の意をこめてだろう、SNSのタイムラインやラジオなどで、彼の残していった名曲が数十年の刻をこえて流れていた。

その中のひとつ”Oh Well”は、スタジオ版やライブ版、そして数々のカヴァー。それこそギターキッズが投稿する「やってみた」的な動画なんかを含めると無数のバージョンが存在する。

そう、何と言ってもイントロのギターフレーズがズバ抜けてカッコイイのだ。

これから紹介するギタリストも、そんなギターフレーズに夢中になった一人なのだろうと思いながら書いていく。


“Oh Well”を私が初めて耳にしたのは、1969年のオリジナル版が発表されてから30年ほど経ってからだった。

1999年にリリースされた若きブルースマン、ケニー・ウェイン・シェパードの3rdアルバム”LIVE ON”。

当時の私のバンド仲間だったギター少年が「すごかとの出たぞ!」と興奮気味にそのCDの9曲目を聴かせてくれた。

まず耳に飛び込んでくるのは独創的なギターのイントロ。初回は「なんじゃこりゃ!?」と思ったものだ。10回も聴くと耳馴染みがよく、カッコイイギターフレーズという印象。いざコピーしてみると、どこが小節のアタマなのかさえもさんざん迷子になり、テイクを重ねるごとに嫌いになりそうになっていた。

そんな印象的なギターのイントロから始まり、お次はヴォーカルが絡んでいく。

ケニー・ウェイン・シェパード・バンドに参加しているノア・ハントというヴォーカリストは、タフだけどもスウィートさを兼ね備えている。粘り気のあるウェットな歌声は、ハードロックやメタルにもとても合いそうだが、随所に甘さがあって、ケニーのブルースをベーシックとしたギターとは非常に良い効果を生んでいた。

曲はそこからバンドインに展開していくが、ヴォーカリストの印象、ドラムの音作りやフレーズの具合から、オリジナルのフリートウッドマックよりもかなりハードに仕上がった”Oh Well”となっている。だからこそ当時のバンド少年たちにも響いたのかもしれないな、と懐かしい気持ちになった。

ここからは、当時を懐かしみながらケニー・ウェイン・シェパードの”LIVE ON”を振り返ってみようと思う。


ケニーは高校在学中の1995年にレコードデビューし、スティービー・レイ・ヴォーンに影響を受けたという彼のギタースタイルから若きブルースの後継者として注目を集めた。

“Oh Well”が収録されている3rdアルバム”LIVE ON”は当時の流行りもあるのか、往年のブルースロックよりもかなりハードな仕上がりになっている。

まずは1曲目、ドラムのタイトなビートからメインリフのギター#1とワウのウネリを効かせたギター#2が掛け合う。そこに加わる極太なヴォーカルが熱量を上げていく”In 2 Deep”。アルバム1曲目の10秒ほどで「これはアタリだな」と思ったのを覚えている。

続いての”Was”は、スライドギターのリフに、後発の四つ打ちビートが絡んでいく。”In 2 Deep”からの繋ぎもバツグンで、勢いがドンドン加速し、ジミ・ヘンドリックスが在籍していたバンド・オブ・ジプシーズの”Them Changes”へと続いた。

4曲名の”Last Goodbye”では一転して、ミドルより少しスローな甘いギター。そしてそれよりも更に甘く艶やかなボーカルが溶け込んでいく。

たとえ意味をもたない歌詞を歌っていたとしても、メロディと歌いまわしだけで哀愁が伝わってくる。思わず口ずさんでしまうような、そんな美メロを楽しませてくれる。

中盤戦は”Shotgun Blues”をはじめとするブルース進行を基調とした楽曲が続く。この曲に関してはライブでも多くプレイされており、ブルース特有のプレイヤーの掛け合いの楽しさやスリリングなテンション感がよく伝わってくる。

ケニー流のロックのフィルターがかかった分厚くハードなブルースロックは7曲目の”You Should Know Better”までグングン勢いを増していった。

“Every Time It Rains”の心地よいスライドギターでギアがニュートラルに戻ったかと思うと、”Oh Well”の鋭いギターイントロが斬り込んでくる。この並びを考えた人は天才だろう。

タイトル曲の”Live On”はミドルなスウィートナンバー。ノア・ハントのボーカルとオルガンと女性コーラスのマッチングはバンドの新たな一面を見せてくれた。こんな変化球をタイトル曲に選ぶとは憎い演出だなと思ったが、それは私の考えすぎだろうか。

“Where Was I?”は、青春映画のエンディングのようなカラッとしたカントリーポップスに仕上がっており、ラストの”Electric Lullaby”と相まって、アルバムの終わりを気持ちよく締めくくった。


CDラックから久しぶりに手に取ったケニー・ウェイン・シェパードの”LIVE ON”は、発売から20年以上経った今も色あせることなく極上のブルースロックを楽しませてくれた。

オリジナルの”Oh Well”に関しては半世紀前の楽曲だが、これから先もあのイントロでギターキッズたちを夢中にさせるに違いない。

そしてまたブルースロックは受け継がれていくのだろう。

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