それでも人は生きていく|中田裕二「君が為に」を聴いて思うこと

それでも人は生きていく|中田裕二「君が為に」を聴いて思うこと

中田裕二が、9月9日(水)に新曲「君が為に」を配信リリースした。

中田は今年の4月、愛や哀しみのグラデーションを鮮やかに、かつシンプルにまとめ上げたアルバム『DOUBLE STANDARD』をリリースしたばかりであるが、今作ではさらに”人”に寄り添う姿勢を感じさせる。

必要最小限にまで絞られた音数、夕凪のように穏やかなメロディー。これらは『DOUBLE STANDARD』の頃から引き継がれているものだろう。しかしこの曲には、より”強さ”を感じざるを得ない。まるで子守歌のようなやさしさを纏いながらも、力強い何かがうごめいている。そしてその力強さは、消えかけていた灯火を再び灯していくようだ。

明日を恐れないで、明日を拒まないで。目まぐるしく日々が形を変えていった2020年において、中田裕二の放つ(というよりも、手を握りそっと語りかけるようである)言葉に、気持ちを見透かされているような気持ちになった人も多いだろう。

私たちはいつの間に、明日を拒んでしまう時がある。夜に沈んでなくなってしまえばいいと思う刹那がある。中田裕二というアーティストは、その刹那を見逃さない。そしていつまでも、手を差し伸べてしまうのだ。中田裕二に対するこの印象は、彼が椿屋四重奏のフロントマンであった頃から漂い、ソロ・アーティストとなってから「ひかりのまち」をリリースした時、より深い輪郭が刻まれた。そして今、「君が為に」という曲を通し、再び彼は手を差し伸べている。

これからも日々は変わっていくだろう。もしかしたら、突如として影が色濃くなり、あなたを襲うかもしれない。それでもきっと、私たちは希望を捨てきることなどできないのだ。すべてを受け止めるこの一曲が、あなたのもとにある限り。

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