“自分らしさ”を鮮明に記録し、“これから”も映し出す 『FOTOS』Akihiro Nishiguchi Group

“自分らしさ”を鮮明に記録し、“これから”も映し出す 『FOTOS』Akihiro Nishiguchi Group

西口明宏。このサックス奏者の名前を追いかけていると、ありとあらゆる演奏活動をしているのが容易にわかる。黒田卓也、宮川純、中林薫平、柴田亮との「メガプテラス」、ドラマーの海野俊輔がリーダーの「Mirage Trio」、ブルーノートレーベル創立80周年を記念したプロジェクト「BLUE NOTE VOYAGE」への参加など、多方面からのオファーはとどまることを知らない。その期待に応えて、彼はどんな場においても「西口明宏」でしか表現できない演奏で光を放ってきた。

そんな彼が、最も“自分らしさ”を表現するフォーマットである自己のリーダーアルバムを、前作から7年ぶりに完成させた。その名も『FOTOS』だ。

「FOTOS」とは人工言語であるエスペラント語で「写真」という意味を持つ。西口及び彼のグループの現在の姿がタイトル通り、鮮明に映し出された作品となっており、全曲西口の作曲で構成されている。

メンバーは互いのグループで活動を共にすることの多いハクエイ・キム(ピアノ/キーボード)、日本在住中に東京で活躍したジェームス・マコーレー(トロンボーン、現在はオーストラリアに帰国)、今や日本のジャズシーンのグルーヴを担っているといっても過言ではないマーティ・ホロベック(ベース)、ドラムスは近年、活動の幅を広げて躍進している吉良創太という強力なメンバーが集結している。

ゲスト参加のメリンダ・ダイアス・ジャイアシナーのナチュラルな歌声がバンドサウンドと鮮やかな色彩を描く“The Bench”からして、このアルバムが一般的なサックス奏者のリーダー作とは全く異なる様相を呈している事が伝わってくる。

聴き手はアルバムを聴き終える頃に、枠にとらわれない雄大な世界観という全体像が、実は冒頭から示唆されていたことを感じるのではないだろうか。

マーティのエッジの効いたベースが随所に効果的な“Pele of the Sacred Land”や、“Musicsaver”といった一種のフリージャズ的な展開もあれば、“FOTOS”や“Campfire”、“Mangrove”といった、独特のメロディが明確な楽曲もあり、西口の多角的な作曲アプローチを楽しむことができる。そういった多様な楽曲が収められているにもかかわらず、統一感のある情景を形成しているのも、このアルバムの大きな特徴と言えるだろう。

西口の作曲面に焦点を当てて本作を紹介してきたが、レギュラーグループだからこそ成し得る、楽曲への深い理解も相まってのハイレベルな演奏も存分に楽しめる。また、楽曲の魅力、演奏の生々しい息吹を克明に捉えたレコーディングエンジニアのニラジ・カジャンチの仕事ぶりも特筆に値する。

これまでの想いや経験の結晶、次なる一歩の示唆を克明に記録した一葉の写真=『FOTOS』を発表した事によって、西口明宏がこれからどんなサウンドを生み出していくのか。気になって仕方がない。

Apple Musicはこちら

Spotifyはこちら

ディスクレビューカテゴリの最新記事