進化し続ける「ライフワーク」 『Spring Night』北川潔

進化し続ける「ライフワーク」 『Spring Night』北川潔

ベーシストの北川潔は、ニューヨークのジャズシーンの第一線で30年以上活躍している。偉大なピアニスト、ケニー・バロンのレギュラーベーシストとしての活躍はもちろん、ジミー・ヒースやトミー・フラナガン、ジョン・ファディス、ケニー・ギャレットなど、その錚々たる共演歴を見れば彼のベースが現地のシーンでいかに求められているかが容易に読み取れるだろう。様々なギグでバンドサウンドの要を担う中、2000年代より自身のリーダー作も定期的にリリース、そのどれもが高い評価を得ている。

近年では自身のレーベル、「KO RECORDS」から、帰国の折に共演する日本の素晴らしいミュージシャン達との録音で自身の表現したいジャズサウンドを明確に提示してきた。

特に近年は、ピアノに片倉真由子、ドラムスに石若駿を迎えたトリオを軸に、帰国時に共演を重ねて各地で熱い演奏を披露。2017年にはこのトリオでアルバム『Turning Point』をリリース、圧倒的な演奏は瞬く間に聴く者の心をときめかせた。

 2019年、北川がケニー・バロントリオの来日公演の忙しい最中を縫って、片倉、石若と再びレコーディング、2020年にリリースされたのが今回紹介する『Spring Night』だ。前作も非常に素晴らしかっただけに、このリリースを楽しみにしていたジャズファンは多いと思う。北川自身もこの2人との演奏を「生きがい」だと語っており、思い入れは深い。

 2015年のアルバム『Walkin’  Ahead』から収録が続く北川のベースソロシリーズ、“Thought”の#5から本作は始まる。指先で弾かれる弦の振動、その振動が空気に伝わっていくのをひしひしと感じる好録音。巧みに表情豊かなサウンドを生み出し、瞬時にジャズの世界を醸造させる北川のベース。1曲目が終わった瞬間、勢い良く飛び込んでくる片倉のピアノが縦横無尽に駆け巡る“Wishy-Washy”からして迫力満点だ。石若のドラムソロも負けじと強力にプッシュ、とにかくものすごく力強い演奏に仰反る。水を得た魚、というのはこのような演奏の事を指す時にピタリと当てはまる言葉だと思う。

片倉と石若の2人が想いの丈を全て発する事ができるのも、北川のベースがしっかりと地に足をつけて、堅固に、そして深いリズムをキープしているからこそだ。

“Forgiveness”では徐々に3人のサウンドが展開していく過程に引き込まれるし、トリオの演奏としての締めくくりとなる“Side Sleeper”では、コンテンポラリーなフィールを纏いながら、スウィング感も目一杯のトリオの推進力が痛快至極。

また4曲収められたベースソロもそれぞれが異なる個性を感じさせ、トリオの演奏と鮮やかなコントラストを生み出している。

 今年3月下旬から4月にかけて、本作を携えての北川の帰国ツアーは昨今の情勢の中、スムーズに開催する事が各地困難であった。再度の帰国ツアーの際は思う存分、このトリオのサウンドを日本国中のリスナーへ目一杯聴かせてほしいと切に願う。

本作は北川のBandcampからダウンロード購入可能。

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