【コラム】ジョン・コルトレーン『至上の愛』について

【コラム】ジョン・コルトレーン『至上の愛』について

神よ、あなたの為に私の出来る全てを行います。我々にもあなたの義の道を歩ませたまえ。比類なき神よ、求めればあなたを見出すことが出来るでしょう。

この様な言葉が、このアルバムにはプリントされている。晩年のコルトレーンの音楽、生き方には、彼の熱烈な信仰心が反映されていた。神の教えを音楽のインスピレーションとし、音楽によって神の愛を説こうとしていた。彼を聖者コルトレーンと呼ぶ人も少なくなかったと言う。

人としての弱さ故、常にしあわせだったとはいえなかった。結婚にも失敗しているし、失意や欲求不満のはけ口を酒や麻薬に求めたこともあった。そんな時、弱さを克服するため信仰を心のよりどころとし、神の臨在を感じ、そして語ったのだ。そんな彼の言葉を語ったのがこのアルバムである。

このアルバムはパート1からパー ト4( 「承認」「決意」「追求」「賛美」)までの4つの楽曲から構成されている。パート1「承認」では 彼の真骨頂であるモード奏法が阿修羅のごとくプレイされて いる。マイルス・ディビスの「カインド・オブ・ブルー」に参加していた時はとに かく音の数が多く、フレーズがリズムの枠に収まらず、はみ出したり、足りなかっ たりしていた。その事も影響したのだろうか、それからは徹底してモード・ジャズを追求していった、そんなコルトレーンの演奏が堪能できる楽曲である。

パート2「決意」において、ここでのプレイは人間がこの様な演奏が果たして出来るものなのか?と思えるほど凄い。テンションを使った複雑なコードが2拍めごとに進行していく、それを何とアドリブでそれぞれの音階に変えながら演奏しているのである。マイルス・バンドを辞める一年間位、「モード」とは正反対のきわめて複雑なコード進行の上でソロを吹きまくる、という試みに挑戦していたその成果を聴くことが 出来ると言ったところだろう。まるでクラシックのショスタコービッチを彷彿させ るテンションコードの連続が困惑した精神性に聴く者を落としていく。

パート3「追求」では、ピアノの名手、ご存知マッコイ・ターナーが超絶プレイを披露している。ここでもテンションコードをバックにディミニッシュ、オルタード等のスケールが網羅され、巻き風のごとく心を揺さぶって行く。

そして最後のパート4「賛美」では、曲想は一変したかの様に、ニグロ・スピリ チュアルな祈りの旋律に変わっていく。黒人霊歌を思わせる楽曲は締めくくりの曲 にふさわしいと言えるだろう。

今で言うコンセプト・アルバムとでも言えるのだろうか、これについては賛否両論 あるだろうが、このアルバムはいわゆるコルトレーン・ジャズのひとつの頂点をな すものであり、1960年代を代表する名作名演であることは間違いないであろう。並外れた努力家だったコルトレーンの到達したこの作品に、時代を超えて感銘せず にはいられない。

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