限りなく透明に近い音 キース・ジャレット「The Köln Concert」

限りなく透明に近い音 キース・ジャレット「The Köln Concert」

極端にうつむきながらピアノを奏でるキース・ジャレット。

そんな姿の写真をあしらったアルバムジャケットは、美しいジャケットが多いレーベルECMのアルバムの中でも格段に心惹かれるほど。そんなジャケ買い必至なこのアルバムは、キース・ジャレットのインプロヴィゼーションのセンスが遺憾なく発揮された名盤「ケルン・コンサート」だ。

美しいのはジャケットだけではない。流れる音もまた格別。最初の音が鳴った瞬間から「これ本当に即興なの?」と問い質したいほど、麗しい旋律がこれでもかというくらい次から次へと展開されていく。美しすぎて部屋の空気も清々しく変わってしまうほどだ。

「ソロで即興演奏を行なうコンサート」を収録したこのアルバム。ジャズミュージシャンのキース・ジャレットの作品であることから、ジャズという枠で紹介されてはいるが、聴いていてもジャズの“匂い”というものがまったくしない。ジャズ特有のスイング感、煙ったい空気感が無いのである。

強いて音の感じを言えば「透明」、ひたすら透明な音がさらさらと流れる感じだろうか。

ECMのレーベルはThe Most Beautiful Sound Next To Silence(沈黙の次に最も美しい音)をコンセプトとしているが、まさにそれを表しているようだ。

「音が透明」というと冷たい感じがするかもしれないが、そういうニュアンスはこの場合含まない。演奏の途中、悦に入ったキースはピアノを弾きながら歌うように唸り声を上げ、これがまた情熱的だ。

特に1曲目(即興演奏だからか曲名はなく、このアルバムは4曲収められているが、それぞれPartⅠ、Ⅱa、Ⅱb、Ⅱc という番号が付いているだけだ)、20分を過ぎたあたりからクライマックスに向かって盛り上がるメロディに合わせ歌う(というか唸る)キース。

そのあまりの高揚感に聴いているこっちもうーんと唸りそうになるほど。まさに「情熱」もほとばしっている“熱い”アルバムでもあるのだ。

この演奏を録音した当日のキースの体調は芳しくなく、ピアノのコンディションも悪かったようだが、それを驚異の集中力と高揚感と、ほとばしるインプロヴィゼーションで「極上の音楽」を鳴らしているのが分かる。

演奏後終了後、ケルンの聴衆は拍手喝采。口笛を吹いている人も。こんなのを聴かせられたら、口笛のひとつも吹きたくなるだろう。

多くの人を魅了する、このジャズらしからぬジャズの名盤。心洗われる美しく透明で情熱的な音楽が奏でられている。

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