【コラム】Jazzの金字塔:パット・メセニー

【コラム】Jazzの金字塔:パット・メセニー

「まるでアメリカン・ポップ・ロックだよ」

私の友達がパット・メセニーの「アメリカン・ガレージ」と言うアルバムを紹介してくれた時に言った言葉を、今でもはっきりと覚えている。

さわやかな風が運ぶアメリカの若者の息吹が、心地よいサ ウンドに載せて私の心をブーストしてくれた。彼のジャズギターが楽曲に、ぴったりフィットしている。

メセニーの資質を見抜いたのはバイブ奏者のゲイリー・バートンで、彼を自己のバンドへ迎えている。メセニーは1953年8月12日にミズリー州に生まれた。13才の時、 偶然にも同州のカンザス・シティーでゲイリー・バートン・カルテットの演奏を聴 いてインスパイアされ、以後ジャズ・ギターの道を進む決心をしたと言う。

当時のカルテットにはその頃の若い世代を代表する天才ギタリスト、ジャズとロックの融合を初めて成し遂げたラリー・コリエルが在籍していて、さらにバイブの奏 法をハーモニーの面から改革したバートンのプレイがメセニーを音楽の世界へと駆り立てたのは容易に想像ができる。

メセニーのギタープレイについて言えば、正当派ジャズギターである。その事はフロリダのマイアミ大学在籍中に大学のギター講師として雇われたり、更にはバートンの紹介でバークリー音楽院の教師にも迎えいれられた事からも分かる。

前に彼のインタビューの中で、「ジャズを演奏する上で、ジャズ理論は必要か」 と言う質問に「絶対に必要です、文章を書くとき、文法が必要なのと同じ事で す」と明確に答えていたのを思い出す。メセニーのギターサウンドを作り出すの に欠かせないのが愛用のフルアコである。エフェ クターのリバーブとギター本体での音の共鳴が甘美な残響音をかもしだし、あたかもサウンドが空中浮遊しているような広がりを作り上げている。このエッジの効きの少ない音色がとても心地よいのだ。

メセニーのアルバムと音楽性について言えば、「思い出のサン・ロレンツォ」、そして「愛のカフェ・オーレ」この二枚のアルバムは最高傑作であると個人的に 思う。パット・メセニー・グループの一員であるピアニストのライル・メルズはメセニーにとって楽曲を作るうえで欠かせない存在であり、「思い出のサン・ロレンツォ」ではその底力を十分に披露している。また、「愛のカフェ・オーレ」でメセニーはギター・シンセサイザーを器用しており、その独特の音色は一度聴いたら忘れることは出来ないだろう。

後のアルバム「speaking of now」ではあたかも人間賛歌とでも言おうか、感動的な楽曲を作り出しているが、彼の音楽スタイルの原点は、この二枚のアルバムからではないかと思う。このアルバムは一生聴き続ける価値がある。伸び伸びと自然によく歌うメセニーのギター、格調と知性、そしてそ こに漂うナイーブな優しさとみずみずしい香気、人を果てしない内面の旅へといざ なうやすらぎの空間。

アルバム「思い出のサン・ロレンツォ」を聴けば、これが決して誇張していない事が分かるであろう。実際、私も今、聴きたくなっているのだ から。

コラムカテゴリの最新記事