Mac Ayresのデビュー・アルバムが素敵だった話。

Mac Ayresのデビュー・アルバムが素敵だった話。

秋空に溶けていくような音楽。ニューヨーク出身のMac Ayresのデビュー・アルバム『Something to Feel』は、少し冷たさを帯び始めた風のように、寄り添っては空に消えていく。そんな音楽だ。

Stevie WonderMarvin GayeD’Angeloなどに影響を受けたと自ら語る彼の音楽は、19歳の頃に発表したEP『I Know Enough』の頃から既にシーンをザワつかせていた。SoundCloud上で話題となった一曲「Easy」で私たちが感じていた予感は、デビュー・アルバムのリリースとともに確信となったのだ。

彼のアルバム『Something to Feel』に収められた曲の数々は、その確信をさらに色濃くしていく。

今回のアルバムの2曲目に参加しているBraxton Cookに関しては、こちらの記事で触れているので、ぜひ読んでほしい。名門ジュリアード出身のサックス奏者で、Christian Scott一派として世界ツアーに参加しながら、サックス奏者としてのみならずヴォーカリストとしても人気を集めている存在だ。彼のデビュー・アルバム『Somewhere in Between』は、きらめきながらもどこか都会の渇きがあり、なんとも素晴らしい一枚である。

Mac Ayresのデビュー・アルバムに話を戻すが、なんと言ったって彼の強みは”甘ったるさ”だ。

Mac Ayres自身から放たれる甘い歌声のせいなのか、彼の曲はどれもがスウィート。甘いどころではない。”甘ったるい”のだ。

しかし、その甘ったるさは私たちを飽きさせない。冷たいシーツに脚を滑り込ませるようなメロディーラインが、聴いても聴いても私の心をゆっくりと溶かす。そして、少女の足取りのように軽やかに、音の一粒一粒が空に溶けていく。

まるで、どこを切り取っても美しい景色。そんな完璧な一枚を聴かないでどうするというのだろう。

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