ブラクストン・クックという男|ミレニアル世代の新たな調和

ブラクストン・クックという男|ミレニアル世代の新たな調和

Braxton Cook(ブラクストン・クック)という名を、ジャズリスナーの多くが一度は聞いたことがあるかもしれない。あるいはすでに深く愛している、という人も少なからずいるだろう。この私もその一人である。

それでは、なぜ彼を愛しているのか?

この記事では、彼へのラブレターのような気持ちも込めつつ、Braxton Cookの魅力を紐解いていこうと思う。

ヴォーカリストとしての才能を開花させデビュー

Braxton Cookのデビューは、2017年のこと。Christian Scott一派の一員としてすでに人気を集めていた彼のデビュー・アルバムには、多くの注目が集まっていた。

Braxton Cookがデビューにいたるまで

彼は若き頃から(今もまだ十分若いが)ジャズシーンを駆け抜けて来た逸材だ。文字通り流星のごとく現れた彼が音楽に目覚めたのは5歳の頃。MotownやBill Withersなどの音楽に囲まれながら育った彼は、父親がサックスで演奏した“Somewhere Over The Rainbow”に衝撃を受ける。その頃からサックス・プレイヤーとしての彼は歩み始めたのだ。

幼き頃からサックスに親しんできた彼は、NYの名門・ジュリアード音楽院で学びながらも、Wynton MarsalisやJon Batisteらと連日ライブパフォーマンス。のちにDonald HarrisonのライブでChristian Scottに才能を見出され、グループの一員となった。

デビュー・アルバムの発売に至るまでのこの経歴から、彼がどれほどの存在感でジャズシーンを彩っているかお分かりいただけるだろう。

甘く儚いヴォーカル、ジャズとR&Bの溶けゆく時

デビュー・アルバムの表題曲“Somewhere in Between”を聴いた時の印象を言葉にするならば、夢で見た移りゆく七色のようで、カーテンの隙間から差し込む朝日のようで、眠りに落ちるその瞬間のようだった。

やはり触れずにいられないのが、Braxton Cookの甘く儚いヴォーカルだ。彼のシルキーな歌声に微睡む時、ジャズとR&Bは滲むように溶けていく。他の何ものにも変えがたい心地よさがリスナーを包む。寄り添うような彼のサックス、そして歌声は、続く2枚目のアルバム“No Doubt”において、さらに洗練されていった。

“No Doubt”に収録されている1曲である“When You Hold Me”は、90年代R&Bを軸としたメロウなナンバー。ジャズとR&Bがシームレスに溶けゆく世界に、より深く深く潜り込んだような作品だ。R&Bらしいセクシーさも濃度を増している。

しかしその他の曲も聴いていただけると分かるように、彼は決してジャズとR&Bという深き海に沈んでいくわけではない。時にはきらめくようにポップで、時には泳ぐようなトラップで……ジャズとR&Bのみならず、あらゆる可能性を秘めている1枚を彼は作り上げたのだ。

ありきたりでもない、型破りでもない、新たな調和の形

Braxton Cookの音楽が胸を掴んで離さないのは、これまでにあったような既視感を感じるわけでもなく、かと言って奇を衒いすぎているかのような強引さもない、極めて新しくシームレスな調和が何よりものファクターだ。

彼の音楽は、決して詰め込みすぎることがない。都合良くいいとこ取りのしつこい音楽ではなく、緩急が絶妙につけられており、サックスの上手さを押し出すこともない。彼が主役でもあり黒子でもあるような品性があり、そういった彼のスタンスが、いくつかの音楽ジャンルの調和をきれいな硝子玉のように仕上げているのだ。

新たな調和を成し遂げていくBraxton Cookの音楽は、今後どのような顔を見せるのか。「あぁ、またうまいことやられたな」と呟く自分がたやすく想像できるが、結果は如何に。期待して次回作を待とうと思う。

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